セラピストにむけた情報発信



運動イメージとリハビリテーションに関する最近の研究
(Thanks to 安田和弘氏,門馬博氏)


2008年12月17日

私たちの研究室には理学療法士の大学院生がコンスタントに1-2名在席しております.既に大学院を修了してリハビリの現場に戻っている方々も含め,彼らとの交流を通して知った様々な知見が,私にとって大きな財産となっております.

本日紹介する運動イメージに関する2つの研究も,それぞれ現在M2の安田和弘氏,および修了生である門馬博氏(杏林大学)から紹介をしてもらった最近の研究です.

彼らは非常にスタイリッシュなホームページにより,独自の情報発信をおこなっております.リンク先を合わせてご参照いただければ幸いです.


【論文1】 運動イメージの理学療法への応用に関するレビュー
  • Dickstein R et al. Motor imagery in physical therapist practice. Phys Ther 87, 942-953, 2007
  • 運動イメージを理学療法へ応用してきた事例を中心に,数多くの先行知見の成果を概説しています.どのような患者を対象としてきたか?視覚イメージと運動イメージで結果がどのように異なるか?イメージの鮮明度の影響はどの程度か?具体的な実験プロトコルは?といった話題が提供されています.

【論文2】 運動イメージを鮮明に描ける人とそうでない人の脳活動はどのように異なるか?
  • Guillot A et al. Functional neuroanatomical networks associated with expertise in motor imagery. Neuroimage 41, 1471-1483, 2008
  • 運動のイメージ中は主として上頭頂葉,下頭頂葉,運動前野が強く活動します.運動イメージを鮮明に描ける人は,これらの領域が強く活動しますが,あまり鮮明に描けない人は,これらの領域以外にも,小脳など広汎な部位に活動が見られるようです.著者らはこの結果に基づき,運動イメージを鮮明に描ける人は,少ない脳部位の活動で効率的にイメージを描くことができるのだろうと説明しています.
  • この成果が持つ臨床的意義についてはそれほど明確ではありませんが,運動イメージの鮮明度によって顕著に脳活動が異なるのならば,患者さんの運動イメージの鮮明度を把握しておくことで,運動イメージが脳のレベルでどのような影響をもたらすかをある程度予測し,イメージを用いた介入の是非を判断したほうが良いのかもしれません.


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